めっき入門編

登場人物

  • コミー

    埼玉県戸田市在住。
    モンスター。年齢不詳。
    最近、初めてめっきという言葉を聞いてなんだか気になっているみたい。

  • 先生

    一級めっき技能士。
    めっきについて、教えてくれるらしい。

  • ヤーテック

    コミーのモンスター友達

めっきってなに?

  • この前、「めっき」ってことばを初めて聞いて、何のことかちょっと気になっているんだ
  • 「めっき」って実は私たちの生活に深く関わっているのよ!
  • へぇ~。どんなところに使われているの?
  • パソコンやスマホはもちろん、私たちの身近に「めっき」の技術が多く使われているわ。
    今日は「めっき」についてやさしく解説していくね。

パソコン・スマホ

  • パソコンやスマホの中に入っている電子部品やプリント基板の多くが、「めっき」の技術で作られているわ。
  • そうなの?でも見たことないかも…
  • そうね。
    現在の「めっき」技術は、電子部品や通信機器、機械部品など、先端産業に多く使われているけど、製品の内部に使われているからなかなか目に触れることは少ないわね。

自動車

  • じゃあ、自動車はどうかしら。
    今の自動車は電子制御が多く使われているわよね。
    そこには、パソコンやスマホのように、プリント基板や電子機器に「めっき」の技術が使われているわ。
  • へーー・やっぱり見えないとこばっかりだ。
  • いえいえい、そんなこともないのよ。
    外観部品として、エンブレムやグリルにも「めっき」が多く採用されているの。
    金属色で高級感を出したり、軽量化、腐食防止にも「めっき」の技術が活かされているのよ!
  • けっこう身近にあるのはわかったけど、で、「めっき」の正体ってナニ?
  • 簡単にいうとね、
    「素材の表面に、金属のうすい膜をつけること」なの
  • うーーん。
    わかったような、わからないような…一体、何のために「めっき」が必要なの?
  • 「めっき」するとね、こんなことができちゃうの!

「めっき」って何のためにするの?

  • 外観を美しくみせる
  • 用途アクセサリー・自動車部品など

komiyatechno

  • サビないようにする
  • 用途自動車部品、自転車など
  • すべりをよくする
  • 用途コピー機の紙送り部など
  • 電気伝導をよくする
  • 用途PC基盤、電子部品など
  • 薬品から守る
  • 用途水回り部品や機械部品など
  • 抗菌性をアップする
  • 用途蛇口や三角コーナーなど

めっきの不具合

  • さて、ここからは、「めっき」について考えていきたいと思います思います!こんなことばを聞いたことないですか?
  • はくり、ふくれ、ざら、ピット、しみ、ピンホール、光沢不良
  • どうですか?わかりましたか?
    そう、これらはすべて、めっきの不具合を指すことばです。
  • 先ほど紹介した「めっき」の不具合は、めっき加工においては、致命的です。
  • そしてこれらのほとんどが、製品に付着した汚れが原因となるのです。
  • え??汚れ?
  • 製品は、たくさんの工程を経て、コミヤテクノに届けられているの。
    それと同時に色々な汚れも付着していくわ。
    例えば、加工の時に使ったや、一時保管などで発生したさび、それから、製品を素手で触れた際の指紋とか。結構頑固な汚れが、製品の表面に付着しているの。
  • ということは、その汚れをちゃんと取らないと、
    さっきの写真のような不具合が起こってしまうってことか!
  • コミー、その通り!
    めっきの加工では、製品についた油やさびといった汚れをきちんと取り除くことがとっても大事なの。
  • でも、どうやって取り除くの?
  • では、その除去方法について解説していくね。

めっきの工程

  • 製品に「めっき」をするには、いろんな工程が必要になるわ。
    下に、一般的な「めっき」工程を紹介します。
  • この中でも、めっきの前工程、つまり「①脱脂」「②酸洗浄・酸活性」がとっても重要なの。
    そして、このことを「前処理(まえしょり)」と言うのよ。
  • 前処理は、めっきの不具合の原因となる汚れを取り除いて、きれいで正常なめっきをするための準備をする工程なのよ。
  • ここで汚れをちゃんと取らないといけないんだね。
  • その通り。しかもその汚れは単純ではなくて、ほとんどの場合が混ざりあった形で製品に付着していて厄介なの。
  • じゃあ、汚れをきちんと取り除くためにはどうしたら良いか、工程の意味を正しく知らないといけないね。

脱脂

  • 脱脂工程では、製品に付着している汚れのうち、
    おもに油を取り除くことを目的としているの。
  • 具体的にはどういうこと?
  • 製品の表面は、一見きれいに見えても実は、油や指紋などの汚れが付着していているわ。
    これを専用の水溶液を使って取り除くのよ!
    でも、この汚れが十分に除去できないと、写真のような不具合が起こってしまうの。
  • 油が残っていると、どうしてそんなことが起こる
  • コミー、いい質問ね。右の写真をみて!
    油を薄く塗ったところに、水を垂らしたらこんな感じになるわよね?
    めっき工程では、水溶液に製品を浸していくのだけど、写真のように水をはじく状態のまま水溶液に入れてしまったらどうなるかしら?
  • どの工程でも水をはじいて、
    うまくめっきできないような気がするよ…
  • その通りよ!
    写真のような状態でめっきすると、油が邪魔をして正常な皮膜ができないの。
  • じゃあ、
    水をはじかない状態にすればいいってことか!
  • そう!
    右の写真のように素材が水をはじかないで、表面が水に均一にぬれた状態になっていることが確認できれば、脱脂工程は合格よ!
  • だんだん、
    前処理のことわかってきた気がするよ!
  • 脱脂不足は必ず不具合を招きます!
    みなさんも製品の脱脂後の表面状態に水はじきがないか、よく観察しましょう。不具合を事前に回避できる可能性があります。

酸洗浄・酸活性

  • 次は酸洗浄と酸活性ね。
  • 脱脂で、表面のが取れて、水はじきがなければ、もうめっきして大丈夫でしょ?
  • そうね。脱脂が十分であれば確かにめっきはできるわね。
    でもね、さっき話した汚れの中にまだ取り除けていないものがなかったかしら?
  • あ、さびだったよね!
  • そう、さびよね。
  • 実はね、さびの他にも素材の表面にはいくつか本来の性質とは違う層が存在していて、この層も取り除かないと、密着のいいめっきができないの。
  • この、さび本来の性質とは違う層を酸性の水溶液を使って取り除くのが
    酸洗浄・酸活性の工程なの。
  • そして、ここでもさびや性質が変化してしまった層を除去できないままめっきすると、正常なめっきが形成されず、 しばらくしてからはくりふくれなどの密着不良やその他、先ほど紹介した不具合を引き起こす可能性があるわ。
  • 前処理が不具合の原因になることが、よく分かったよ!
    なぜ不具合が起こってしまうのか、理解して作業することが大切だね!

水洗

  • めっきラインには、各工程毎に水洗工程がありますが
    何のためにあるのか知っていますか?
  • ① ジグや製品についた水溶液を、洗い流し、次の工程に持ち込まないようにするため

    ② 脱脂や酸洗浄で除去した汚れを完全に洗い流すため

  • めっきでは、数多くの水溶液を使っています。
    ある水溶液どうしが混ざると、 特殊な固形物が発生し、異物が付着したり、しみの原因にもなります。そのため水の清浄度(きれいさ)の管理も重要です。

めっきの原理

  • めっき槽の中はこんな感じになっています。
    製品を整流器のマイナスにつなぐことで、めっきの素になる亜鉛が製品に引きよせられ、製品の表面にくっつくことでめっきができます。
  • めっきしたい金属イオンを
    含む(金属が溶けた)水溶液中で、
    製品を陰極(ー極)、
    めっきしたい金属を陽極(+極)として電解します。

    電解:
    電気分解のこと。
    電気エネルギーを与えて、自然では起こらない酸化還元反応を強制的に起こすこと。

  • これで、「めっき」についていろいろ紹介してきたけどどうだった?
  • めっきにとって「前処理」がとても大事な工程だということがよくわかったよ!
  • 素材に付着した汚れがいろいろな不具合の原因になることが理解できたと思います。
    「めっきの品質は前処理で7~8割決まる!」と言われるほどとっても重要な工程です。